違いのわかる都市生活日記

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月映

11/3で会期終了を迎えた展示ですが、せつない印象が強く残るものでした。100年前の美術学生が木版画や詩で綴った雑誌「月映」、創作意欲の塊のような時期の作品と思うと、余計にほとばしる何かを感じてしまいます。私事ではありますが、若い頃に同人誌を作成していたこともあり、同じ趣味の仲間へ向けた表現の楽しさについては理解ができます。互いに影響を受けながら、切磋琢磨していく感じがたまりません。展示作品は全てが出来のいいものばかりではないのですが、展示の方法が上手いのか濃密さが伝わってきます。田中恭吉、藤森静雄、恩地孝四郎、それぞれに持ち味がありますが、なかでも藤森作品の情緒に深い余韻が残ります。「夜」は生と死の在り方を、夜と眠りから墓地へと連想を誘い哲学的な意味を考えさせる作品で、その雰囲気が魅力でした。版画には向き合ったことがないけれど、印刷技術が発達していない時代においてはなくてはならない表現方法であったと思います。東京ステーションギャラリーという箱もお似合いで、本年度のベストな展覧会でありました。